「お父さんの食事は、コード3で」。退院のときにそう言われて、意味が分からなかった。──飲み込みに配慮した食事には、全国で共通して使われる段階の分類があります。数字そのものより、それが何のためにあるのかを知っておくと、専門職との話がぐっと通じやすくなります。
以前は、施設ごとに呼び名が違いました
飲み込みに配慮した食事は、長いあいだ、地域や施設ごとに違う名前と段階で呼ばれていました。「軟菜食」「ミキサー食」「ペースト食」──同じ言葉でも、病院が変われば中身が違うことがありました。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会は、急性期病院から回復期病院へ、あるいは病院から施設・在宅へと移る連携が普及している今日、統一基準や統一名称がないことは摂食嚥下障害者および関係者の不利益となっていると指摘しています1。
退院のときに「やわらかいものを」と伝えられても、受け取る側がその「やわらかい」をどう解釈するかは分かりません。そういう状態が長く続いていました。
共通の物差しとして作られました
そこで学会が定めたのが「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」、略して学会分類2021です1。2013年に作られたものを、8年ぶんの新たな知見を踏まえて改訂したものです1。
分類は2種類あります。食事の分類と、とろみの分類です1。食事の方には、なめらかでまとまりのあるものから、形があってやわらかいものまで、複数の段階が設けられています。
この分類には、ひとつ心にとめておきたい配慮があります。学会は、従来使われてきた「嚥下障害食」という言い方をやめ、「障害」という語を用いずに「嚥下調整食」という名称を採用しています。嚥下機能に配慮してととのえた・用意した・手を加えたという意味です1。
学会は、この用語について異論は出ておらず、摂食嚥下臨床に関わる多職種の共通認識になりつつある、としています1。呼び名ひとつのことのようですが、食べる人の側に立った言葉の選び方だと思います。
家族にとって、どう役に立つか
段階の細かい定義を覚える必要はありません。知っておくと役に立つのは、次のような場面です。
退院・転院・施設が変わるとき
「いま、どの段階ですか」と聞けます。共通の言葉なので次の場所にそのまま引き継げます。口頭で「やわらかめで」と伝えるより、はるかに正確です。
市販の食品を選ぶとき
介護食の中には、この分類に対応する段階を表示している商品があります。言われた段階が分かっていれば、選ぶときの手がかりになります。
家で用意するとき
目標が分かります。何をどこまでやわらかくすればよいのか、感覚ではなく基準で考えられます。
段階を決めるのは、専門職です
大切なことをひとつ。ご自身やご家族の段階を、見た目や勘で判断しないでください。
飲み込みの状態は、外から見て分かるものではありません。どの段階が適切かは、嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査などの評価を経て、医師・歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士といった専門職が判断します。
分類を知る目的は、自分で決めるためではなく、専門職と同じ言葉で話せるようになるためです。
とろみにも段階があります
水やお茶などの液体は、さらさらしているほど速く流れ、飲み込むタイミングを合わせるのが難しくなります。そのため、とろみをつけて調整することがあります。
学会分類2021には、食事とは別にとろみの分類も含まれています1。濃さの段階が、こちらも共通の言葉で示されています。「とろみをつけて」と言われたとき、どのくらいなのか。ここにも物差しがあります。
詳しく知りたいとき
各段階の正確な定義は、学会が公開しているマニュアルに記載されています。専門職の方はもちろん、詳しく知りたいご家族も読むことができます。
ただし学会自身が、早見表だけでなく解説文を熟読したうえで活用してほしいと述べています1。段階の名前だけが一人歩きすると、かえって誤解のもとになるためだと思われます。
その一言から、話が具体的になります
「うちの家族は、いまどの段階ですか」
この一言が言えるだけで、専門職とのやりとりは変わります。曖昧な「やわらかいもの」ではなく、共通の言葉で確認できるからです。
気になることがあれば、担当の専門職にお尋ねください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療に関する助言ではありません。食事形態の判断は、必ず医師をはじめとする専門職にご相談ください。
出典
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」日摂食嚥下リハ会誌 25(2):135–149, 2021
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf