飲み込みにくさは、本人からはなかなか言い出せません。恥ずかしさもあれば、心配をかけたくない気持ちもあります。だから多くの場合、先に気づくのは周りです。ここでは、日々の暮らしの中で現れる変化と、気づいたときにどう声をかけるかを考えます。
この記事のポイント
家族が気づきやすい飲み込みにくさのサインは、食事中や水分でむせる、食べる量が減る、食事に時間がかかる、食後に声が変わる、といった変化です。
- 体重が減る、熱を出すことが増える、も変化のひとつです
- どのサインも、それだけで嚥下障害とは限りません
- 気づいた変化を書き留めて、専門職に伝えてください
本人は、言いません
食事は誰にとっても当たり前の行為です。それがうまくいかなくなったとき、多くの人はまず自分で工夫します。小さく切る、ゆっくり食べる、汁物を控える。周りに言わないまま、静かに調整していることがあります。
気づいたときには、食事の時間そのものが苦痛になっていた──そういうことは珍しくありません。だからこそ、周りが変化に気づく意味があります。
食卓で見えること
国立長寿医療研究センターは、嚥下障害の症状として「食事中や食後にむせる」「お茶などの水分でむせる」「食べる量が減った」「喉に物が詰まっている感じ」「誤嚥性肺炎を繰り返す」を挙げています1。
これらは、一緒に食卓を囲んでいれば気づけるものです。加えて、次のような場面でも変化は現れます。
- 食事に時間がかかるようになった同じ量を食べ終えるのに、以前よりずっと長くかかる。途中で箸が止まる。
- 好きだったものを残すようになったとくに、パサつくもの・繊維の多いもの・水分の多いものを避けていないか。
- 食後に声が変わる食べたあと、声がかすれたり、湿ったような響きになったりする。
- 口の中に食べ物が残っている飲み込んだつもりでも、頬の内側や舌の上に残っていることがある。
- 食事中に疲れて見える食べること自体に体力を使っている状態かもしれません。
食卓の外で見えること
変化は食事の場面だけに現れるとは限りません。
- 体重が減ってきた食べる量が減れば、時間をかけて体重に表れます。
- 熱を出すことが増えた原因のはっきりしない発熱を繰り返す場合があります1。
- 人と食べることを避けるようになった外食に誘っても断る。集まりに顔を出さなくなる。むせるところを見られたくない、という気持ちが背景にあることがあります。
ここに挙げたものは、いずれも「これがあれば嚥下障害」という判断基準ではありません。年齢や体調、服用している薬など、原因はさまざまです。
大切なのは、当てはまるかどうかを家庭で結論づけることではなく、気づいた変化を専門職に伝えることです。
「年のせい」で片づけないでください
食が細くなった、食事が遅くなった、好き嫌いが増えた。こうした変化は「歳をとったから」で説明がついてしまいます。実際、そういう面もあります。
ただ、本人はむせるのがつらくて食事を避けているのかもしれません。食欲の問題に見えて、飲み込みの問題であることがあります。原因が分かれば、対応の方法があります。
どう声をかけるか
「むせてるけど大丈夫?」と聞くと、多くの人は「大丈夫」と答えます。責められていると感じさせない聞き方が要ります。
たとえば、こんな言い方があります。
「最近、食べにくいものってある?」
「これ、食べやすい? かたかったら次から変えるよ」
本人の状態を問うのではなく、食べ物の側に理由を置くと、答えやすくなります。「自分がおかしい」ではなく「これが食べにくい」なら言えます。
記録しておくと、相談が早く進みます
受診や相談のとき、「なんとなく食べにくそうで」だけでは、専門職も判断の手がかりが持てません。気づいたことを書き留めておくと、話が具体的になります。
- いつからだいたいの時期。「半年くらい前から」で十分です。
- 何でむせるか水分か、固形物か、特定の食品か。これは重要な手がかりになります。
- 食事にかかる時間以前と比べてどう変わったか。
- 体重の変化分かる範囲で。母子手帳のように、数字があると経過が見えます。
- 発熱の回数いつ、何度くらい、どのくらい続いたか。
気づいた人が、動けます
本人が言い出しにくいことを、周りが代わりに持ち出す。それは差し出がましいことではなく、必要なことだと思います。
持病がある場合は、その病気の主治医にも伝えてください。パーキンソン病のように、むせないまま誤嚥していることがある病気もあります(「パーキンソン病と飲み込み」)。ALSの食事の工夫は「ALSと食事の工夫」にまとめています。
変化に気づいたら、まずはかかりつけの医師にご相談ください。ほかの相談先は「飲み込みにくさの相談先」にまとめています。
よくある質問
むせるのは、年のせいですか?
年齢による変化という面もあります。ただ、食事中や水分でむせるのは、国立長寿医療研究センターが嚥下障害の症状として挙げているものです。「年のせい」で片づけず、まずはかかりつけの医師にご相談ください。嚥下障害の基本は「嚥下障害とは」にまとめています。
食事のとき以外にも、気づけるサインはありますか?
あります。体重が減ってきた、熱を出すことが増えた、人と食べることを避けるようになった、といった変化です。原因のはっきりしない発熱を繰り返す場合もあります。むせるところを見られたくない気持ちから、外食や集まりを断るようになることもあります。
本人に、飲み込みにくさをどう聞けばいいですか?
「むせてるけど大丈夫?」と聞くと、多くの人は「大丈夫」と答えます。「最近、食べにくいものってある?」のように、本人の状態ではなく、食べ物の側に理由を置くと答えやすくなります。責められていると感じさせない聞き方が大切です。
受診の前に、家族は何を記録しておけばいいですか?
いつから、何でむせるか、食事にかかる時間、体重の変化、発熱の回数を書き留めておくと、相談が早く進みます。時期は「半年くらい前から」で十分です。むせるのが水分か、固形物か、特定の食品かは、重要な手がかりになります。
サインに当てはまったら、嚥下障害ということですか?
そうとは限りません。むせる、食べる量が減る、といった変化は、それだけで嚥下障害と判断できる基準ではありません。年齢や体調、服用している薬など、原因はさまざまです。家庭で結論を出さず、気づいた変化を医師などの専門職に伝えてください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療に関する助言ではありません。ここに挙げた変化は診断基準ではなく、原因は個々の状態によって異なります。判断は必ず医師をはじめとする専門職にご相談ください。
出典
- 国立長寿医療研究センター「摂食嚥下障害」
https://www.ncgg.go.jp/hospital/Swallowing_and_Continence/dysphagia/