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パーキンソン病と飲み込み

パーキンソン病と飲み込み - ショコラ・ダ・ファミリア - Chocolate de Familia

パーキンソン病では、手足の動きだけでなく、飲み込む動きにも変化が現れることがあります。やっかいなのは、むせていなくても起きている場合があることです。ここでは、公的機関と専門医の報告をもとに、のどで何が起きているのか、家庭で何に気づけるのかを整理します。

この記事のポイント

飲み込みにくさ(嚥下障害)は、パーキンソン病では比較的頻度の高い症状です。手足の症状が軽いうちから現れることもあります。

  • 病気の重さや罹病期間と、飲み込みにくさの程度は必ずしも比例しません
  • むせないまま気管に入る「不顕性誤嚥」が起こりやすいことが知られています
  • 薬は口の中の動きには効きますが、のどの動きには効きにくいとされます
  • 気づいたことは、我慢せずに主治医へ伝えてください

飲み込みにくさも症状のひとつです

難病情報センターは、パーキンソン病を「振戦(ふるえ)、動作緩慢、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)を主な運動症状とする病気で、50歳以上で起こることが多い病気です」と説明しています1。あわせて、便秘や頻尿、嗅覚の低下、立ちくらみ、気分が晴れないといった非運動症状があることも挙げられています1。

飲み込みにくさは、この非運動症状のひとつです。国立精神・神経医療研究センター病院の山本敏之医師は、パーキンソン病の摂食嚥下障害を「比較的頻度の高い非運動症状」と述べています2。

ふるえや歩きにくさは目に見えます。けれど、のどの動きは外からは見えません。気づかれにくいところで、静かに変化していることがあります。

病気の重さと比例するとは限りません

「手足の症状が軽いから、飲み込みはまだ大丈夫」とは言い切れません。

専門医の報告では、「パーキンソン病の嚥下機能はパーキンソニズムが重症であるほど悪い傾向にあるが、病初期から嚥下障害が出現することもあり、パーキンソニズムの重症度は必ずしも嚥下障害合併の指標にならない」とされています3。パーキンソン病の症状や罹病期間と、嚥下障害の程度は相関しないことが、この病気の飲み込みにくさの特徴として挙げられています2。

むせないまま起きていることがあります

むせは、食べ物や飲み物が気管に入りかけたときに体が出すサインです。ところが、そのサインが出ないまま気管に入ってしまうことがあります。これを不顕性誤嚥といいます。

パーキンソン病では「患者は嚥下障害の自覚に乏しく、不顕性誤嚥も多い」と報告されています3。本人に自覚がなく、周りからも見えない。だからこそ、評価を受ける意味があります。

嚥下造影検査で誤嚥が確認されたパーキンソン病の患者さんの、検査後2年以内の累積肺炎発症率は45.8%で、誤嚥が確認されなかった患者さんの3.2%より有意に高かったと報告されています3。

これは「検査で誤嚥が見つかった場合」の数字です。不安をあおるための数字ではなく、評価を受けておく意味を示す数字として受け取っていただければと思います。

どこでつまずくのか

飲み込む動きは、口からのど、のどから食道へと続く一連の流れです。パーキンソン病では「嚥下運動のどの期にも異常が出現し、しばしば複数の異常をともなう」とされています3。

  • 口の中(口腔期)舌で食べ物をのどへ送り込む動きが繰り返しになる、一口を何回かに分けて飲み込む、といった変化が現れます。咀嚼では、舌と下顎の動きが遅くなり、下顎の動きの幅が小さくなります3。
  • のど(咽頭期)のどを通る時間が長くなり、のどに食べ物が残ります。水やお茶のように速く流れるものでは、飲み込みの反射が始まるのが遅れます3。
  • 食道の入口食道の入口がうまく開かないために、通りにくくなることがあります3。

「水やお茶でむせる」という訴えが多いのには理由があります。飲み込みの反射が始まるのが遅く、のどを閉じる動きも遅い場合、液体が通るときにのどを閉じるのが間に合わないためです3。

飲み込む仕組みそのものについては「嚥下障害とは」にまとめています。

薬が効く部分と効きにくい部分

パーキンソン病の治療の基本は薬物療法です1。では、薬で飲み込みも良くなるのでしょうか。

報告では、L-ドパによる治療は口の中の動きの異常は改善するものの、のどの動きの異常に対しては効果が不十分とされています3。

一方で、薬の効果が切れている時間(オフ)には全身の動きとともに飲み込みの機能も悪くなるため、効いている時間(オン)を延ばすことは、飲み込みにくさに対しても有効とされています3。食事の時間が薬の効いている時間になるよう調整する、という考え方も示されています2。

薬の量や時間は自己判断で変えないでください

服薬の調整は、主治医の判断で行うものです。食事と薬の時間が合っていないと感じたら、その事実をそのまま主治医に伝えてください。

食卓でできること

専門医の報告で挙げられている対応には、次のようなものがあります。

  • 食形態を調整するとろみをつけるなどして、飲み込みの反射が遅れることで起こる誤嚥や、通りにくさに対応します2。
  • 姿勢を整える顎を引いた姿勢での嚥下は、誤嚥を予防し、肺炎の発症リスクを抑えられる可能性があるとされています2。
  • 訓練を続ける舌の運動、舌抵抗訓練、声帯の内転訓練、メンデルソン手技、頸部や体幹の回旋などが有効とされています3。いずれも専門職の指導のもとで行うものです。

どの工夫が合うかは、飲み込みのどこでつまずいているかによって違います。同じ「とろみ」でも、助けになる場合と、かえって食べにくくなる場合があります。だからこそ、評価にもとづいて選ぶ必要があります。

とろみや食事の形の段階については「学会分類2021とは」をご覧ください。

薬が飲みにくくなったら

飲み込みにくさは、食事だけの問題ではありません。報告では、飲み込みにくさを合併したパーキンソン病の患者さんの臨床的な問題として、誤嚥性肺炎のリスク、食事量が減って栄養状態が悪化すること、そして服薬が難しくなるために症状が急激に悪化することが挙げられています2。

薬が飲みにくい、口に残る、水で流し込んでいる——そうした変化は、本人にとっては小さな不便かもしれません。けれど治療そのものに関わります。我慢せず、早めに主治医へ伝えてください。

気づいたら相談してください

飲み込みにくさが疑われる場合は、質問票や問診でふるい分けをしたうえで、嚥下造影検査などで機能を評価し、障害のパターンに合わせて方針を決めるという流れが示されています3。

家庭でできるのは、診断をつけることではなく、気づいた変化を正確に伝えることです。食卓で見えるサインは「家族が気づくサイン」に、相談先は「飲み込みにくさの相談先」にまとめています。

よくある質問

パーキンソン病では、飲み込みにくさはよく起こりますか?

専門医は、パーキンソン病の摂食嚥下障害を「比較的頻度の高い非運動症状」としています。病初期から現れることもあり、パーキンソニズムの重症度は必ずしも嚥下障害を合併しているかどうかの指標にはならないと報告されています。症状が軽いから大丈夫、とは言い切れません。

むせていなければ、誤嚥していないということですか?

そうとは限りません。パーキンソン病では、患者さんが嚥下障害を自覚しにくく、むせないまま気管に入る不顕性誤嚥も多いと報告されています。むせの有無だけで判断せず、気になる変化があれば主治医にご相談ください。

水やお茶でむせるのはなぜですか?

液体はのどを速く通るため、飲み込みの反射が始まるのが遅れやすいとされています。反射の開始が遅く、のどを閉じる動きも遅い場合、液体が通るときにのどを閉じるのが間に合わず、誤嚥することが多いと報告されています。固形物より水分のほうがむせる、というのは珍しいことではありません。

薬を飲めば、飲み込みも良くなりますか?

L-ドパによる治療は口の中の動きの異常を改善しますが、のどの動きの異常に対しては効果が不十分とされています。一方、薬が切れている時間は飲み込みの機能も悪くなるため、効いている時間を延ばすことは有効とされています。薬の量や時間の調整は必ず主治医の判断で行い、自己判断で変えないでください。

とろみをつければ安心ですか?

飲み込みの反射が遅れて起こる誤嚥や、通りにくさへの対応として、とろみは有効とされています。ただし、飲み込みのどこでつまずいているかによって合う工夫は違い、人によっては食べにくくなることもあります。嚥下の評価にもとづいて、専門職と相談しながら選んでください。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療に関する助言ではありません。症状の現れ方や適切な対応は個々の状態によって異なります。判断は必ず主治医をはじめとする専門職にご相談ください。

出典

  1. 難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」
    https://www.nanbyou.or.jp/entry/169
  2. 山本敏之「パーキンソン病の摂食嚥下障害」神経治療 Vol.37 No.6(2020)S183
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/37/6/37_S183/_pdf/-char/ja
  3. 山本敏之「筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病に対する嚥下障害の評価と対策」臨床神経学 51巻11号(2011)1072-1074
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/51/11/51_11_1072/_article/-char/ja/
  4. 国立長寿医療研究センター「摂食嚥下障害」
    https://www.ncgg.go.jp/hospital/Swallowing_and_Continence/dysphagia/

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